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そして人聞にも、飢餓の季節の接近を告げる(そして脂肪の蓄積を促す)信号がある。 ろくに身体を動かさないことだ。
獲物がいないから狩りに出ず、木の実がないから女も採集に出ない日々、私たちの祖先はできるだけじっとして過ごし、ひたすらエネルギーを節約した。 迫り来る餓死との持久戦である。
身体はそれを覚えている。 そして身体を動かさないのは餓死の危険が追っている証拠だと信じている。
手を伸ばせばそこに無尽蔵の食物があるなんて、私たちの身体は教わっていないからだ。 メスにとっては産卵の季節。
食べ物はいっぱいあるが、この季節に脂肪は蓄積されない。 衰えに逆らう運動飢餓の接近を教える信号は、人間や動物の種によって異なるだろう。
しかし、それに対する私たちの反応は基本的に同じで、身体は衰えのモードに入る。 すでにお気づきのとおり、本書の一貫したメッセージは「成長か衰えか」の究極の選択である。
そして食事も、生物学的には「成長か衰えか」の選択なのである。 そしてはっきり言えば、肥満の背後には衰えの化学物質がある。
身体機能を最低限に抑え、成長も若返りもあきらめて飢餓を(冬や干ばつを)乗り切れ、という信号だ。 たとえ冷蔵庫いっぱいの食品があろうとも、私たちの身体の理解は変わらない。
目の前のベーコンチズパーガーは今年最後の獲物だから、しっかり食べてしっかり脂肪として蓄積せよ、ということになる。 そしてこうした反応を指示するのが、例のC6である。

衰えの化学物質C6が脂肪の蓄積を促し、運動によって放出される成長と更新の化学物質cmがそれを打ち消す。 この仕組みはようやく最近になってわかってきたものだが、けっして意外なことではない。
本書の最初のほうで述べたとおり、cmとC6は成長と衰えの最も基本的な信号なのである。 だから肥満を食い止め、覆すには身体を活発に動かすのが一番であり、他に方法はないと言っていい。
運動こそ身体に春の到来を、成長と若返りの季節の到来を告げるものだからだ。 運動の目的はカロリーを「燃焼」させることではない。
むしろ身体のあらゆる部分に「成長」の信号を伝え、新しい細胞の形成を促し、新陳代謝をよくすることだ。 しっかり運動すれば眠っているときでも新陳代謝がよくなり、余分なカロリーが燃やされる。
そうすれば、時間はかかるけれど、長い目で見れば体重も減ってくる。 もちろん食べ過ぎは禁物だ。
今のアメリカ人みたいにフアストアードを食べ続けていたら、どんなに新陳代謝がよくても太ってしまうだろう。 しかし週に六日の運動を続けていれば、いずれは身体が余計なカロリーを欲しがらなくなる。
何か月か、あるいは一年くらいかかるだろうが、続けていれば自己イメージも変わってくるし、食事量をセーブする習慣もできてくる。 そうすれば夜は前菜だけで満腹感が得られるようになり、昼はサラダで満足するようになるだろう。
それまでの聞は、とにかく身体に悪い食品を遠ざけるように気をつけよう。 私たちの命を縮める食べ物のひとつがデンプン(精製した炭水化物)だ。

九0年代初めのアメリカでは「脂肪のかわりに炭水化物を」という高炭水化物ダイエットがもてはやされたが、その神話は完全に崩壊した。 炭水化物すべてが悪いわけではないが、白もの炭水化物(白米や白い小麦粉製品)は悪者だ。
一方、善玉の炭水化物は自然のままの状態であるもの(果物や野菜、未精白の穀物に含まれる)で、白もの炭水化物に比べて単位あたりのカロリーも少ない。 白もの炭水化物(デンフン)が身体によくないのは、いくら食べても「もっと食べたい」という信号を出し続けるからだ。
脂肪やたんぱく質は、ある程度まで食べると「もう十分」という信号を発するのだが、炭水化物はそういう信号を発しない。 自然界で生きていくには膨大な量の炭水化物を食べる必要があった(一日中、草をはんでいるウシを思い浮かべよ)ので、物理的に腹がいっぱいになることが唯一の停止信号なのである。
デンプンは基本的に砂糖と同じだ。 だから身体によくない。
糖は、私たちの身体が食物の吸収量を読み取る上で重要な役割を担っている。 簡単に言えば、私たちの身体は糖の蓄積によって、どれだけ食べたかを判断するのである。
私たちが食べたものを消化するのは胃酸などの役目だが、これらの化学物質は非常に強力だ。 なにしろ狩りで仕留めた獲物の肉を分解してしまう化学物質だから、扱い方を間違えれば私たち自身の肉体をも分解してしまう。

たとえば胃酸が多すぎれば胃壁に穴を開けてしまうし、インシュリン(これも大事な消化物質だ)せっかく食べたものをすべて消化できの過剰は命取りになる。 ないようでは生存競争に勝ち残れないが、自分の身体を消化してしまうのも困る。
だから胃酸やインシどうやって適量かどうかを判断するか。 ュリンの分泌は適量であることが大事だ。
では、実は、糖がその信号の役割を果たしている。 自然界にあっては、食物から得られる脂肪やたんぱく質の量と糖の量はほぼ比例しており、その比率はほとんどの動植物でだいたい一定している。
だから血糖値(血流内に存在する遊離糖の値)の増加はカロリーの吸収量を正確に示す指標だった。 糖が消化をコントロールする信号となりえた理由である。
唯一の信号ではないが、糖は最も重要な信号だ。 ちなみに食物に含まれる遊離糖の値は血糖指数として知られる。
市販の食品のパッケージには表示されていないが、糖尿病の治療を受けている人ならちゃんと知っているはずだ。 遊離糖は、自然にはあまり存在しない。
だから血糖値がちょっと上がれば、もうそれで十分な食事をしたことの信号となる。 そして先に述べたとおり、インシュリンを含む消化物質の分泌は血糖値の変化に呼応している。
しかし、この何億年もかけて発達してきた精巧なシステムはフアストアードの時代に対応できない。 農業の発明以前、まだ私たちが狩猟・採集生活を送っていたころは、実に二00種類以上の植物や木の実と、一00種類ほどの動物(へビ、いもむし、昆虫などを含む)を食べて生きていた。
こうした野生の食材には、デンプンや糖はほんのわずかしか含まれていない。 デンプンを豊富に含む小麦や米、あるいはジャガイモのような根菜類は農業の発明以降の食材であり、その歴史はわずか一万年前にさかのぼるに過ぎない。

それは私たちの一生から見ると気の遠くなるほど長い時間だが、消化器系の進化のプロセスにとってはごく最近の出来事と言える。 私たちの身体は、生きていくのがやっとの食物しか手に入らない時代に発達してきた。
しかし今は、あり余るほどの食物がある。 この過剰な食物と運動不足、そして脂肪(飽和脂肪)が私たちの命取りだ。
夕食の席に着いたら、ちょっと考えてほしい。 その付け合わせのマッシュポテトには、テーブルシユガーよりも大量の遊離糖が含まれていて、すぐに私たちの血流に入り込み、消化を活発にする。
またコーラひと缶には鹿肉二・二キログラムと同じくらいの遊離糖が含まれる。 さらにこれはどうだろう。
特大サイズのブライドポテトも同様だし、おまけに飽和脂肪も多い。 こんなものが腹に入ると、私たちの身体は驚いてしまう。

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